仕事人

社会にはいろいろな仕事があるよ。気になる仕事や仕事人をたくさん見つけよう!

埼玉県に関連のある仕事人
1979年 生まれ 出身地 埼玉県
さぎょうりょうほうし作業療法士
峯岸みねぎし 佳代かよ
子供の頃の夢: 看護師
クラブ活動(中学校): テニス部
仕事内容
様々(さまざま)な作業や活動を通して,その人らしい生活を獲得(かくとく)するためのリハビリを行う
自己紹介
真面目だとよく言われますが,自覚はありません。ただ,コツコツと細かいことまでこだわって作業をすることが好きなので,そう見られるのかもしれません。休みの日は,カフェで本を読んだりしています。

※このページに書いてある内容は取材日(2016年08月29日)時点のものです

その人らしい生活を送れるように

その人らしい生活を送れるように

(わたし)埼玉(さいたま)総合(そうごう)リハビリテーションセンターという病院で,作業(さぎょう)療法士(りょうほうし)として働いています。病気やケガによってできなくなった日常(にちじょう)生活の動作ができるように,そして,患者(かんじゃ)さんが「その人らしい」生活ができるように,支援(しえん)をするのが「作業(さぎょう)療法(りょうほう)」です。着替(きが)えやお風呂(ふろ)といった身の回りの動作や,学校,仕事,趣味(しゅみ)活動など,日常(にちじょう)生活のさまざまな動作ができるように,練習をします。いわゆるリハビリテーション(リハビリ)です。その人の生活を良くするために,いろいろな方法を用いてリハビリをしていくのが作業(さぎょう)療法(りょうほう),ともいえます。(わたし)は病院で作業(さぎょう)療法(りょうほう)を行っていますが,作業(さぎょう)療法士(りょうほうし)は,福祉(ふくし)の分野や,学校,役所でも活躍(かつやく)しています。

リハビリ内容(ないよう)患者(かんじゃ)さんと決める

リハビリ内容は患者さんと決める

朝は8時ごろに出勤(しゅっきん)して,その日に担当(たんとう)する患者(かんじゃ)さんの情報(じょうほう)を集めたり,リハビリの準備(じゅんび)をしたりします。9時から17時前まで,病棟(びょうとう)や訓練室でリハビリを行います。(わたし)は病院に通ってくる外来患者(かんじゃ)さんの担当(たんとう)で,1人1回につき,40分です。担当(たんとう)患者(かんじゃ)さんは20人ほどいて,1日に大体6,7人の患者(かんじゃ)さんを担当(たんとう)します。土日もリハビリがありますが,他のスタッフと交代で出勤(しゅっきん)します。
患者(かんじゃ)さんによってリハビリの内容(ないよう)や使う道具は(ちが)います。手のリハビリをする人もいれば,着替(きが)えや食事,入浴練習,洗濯(せんたく)や調理練習もあります。注意や集中力,記憶力(きおくりょく)など,メンタル面のリハビリをする人もいます。リハビリの内容(ないよう)は,「患者(かんじゃ)さん本人がどうなりたいのか」や「どういう生活をしているのか」など,まずは患者(かんじゃ)さんの希望や現状(げんじょう)を聞いて,さらに患者(かんじゃ)さんの状態(じょうたい)も見たうえで,患者(かんじゃ)さんと2人で決めていきます。

(かぎ)られた時間で,意欲(いよく)を引き出す

限られた時間で,意欲を引き出す

リハビリに対してモチベーションを持てず,意欲(いよく)を持って取り組めない患者(かんじゃ)さんもいるのですが,そういう人に,リハビリに取り組んでもらうのには苦労します。ご本人から聞き出せる場合には,おうちではどんな生活をしていたのか,趣味(しゅみ)や仕事はどういうことかといったお話を,リハビリを始める前にしたりします。そういう話の中に,「患者(かんじゃ)さん本人がやりたいこと」が入っていることがあるんです。話をする中で見えてきたことを元に,「こういうこともどうですか」とこちらから提案(ていあん)して,「いいな」と思ってもらえたら,それをリハビリのメニューに取り入れて,やってもらいます。
また,(わたし)担当(たんとう)する外来の患者(かんじゃ)さんだと,1回のリハビリの時間が40分しかありません。話を聞いてばかりだと,体を動かす時間がなくなってしまいます。ですから,時間配分を考えながらやっていくのも大事ですね。

患者(かんじゃ)さんの顔が明るくなると,うれしい

患者さんの顔が明るくなると,うれしい

受け身だった患者(かんじゃ)さんが,主体的にリハビリに取り組めるようになったときは(うれ)しいですね。(くも)っていたお顔の表情(ひょうじょう)が明るくなったり,発言が前向きになったりすると,「やった!」と思います。
また,リハビリが終了(しゅうりょう)してしまうと,患者(かんじゃ)さんと会うことはほとんどありませんが,病院に診察(しんさつ)に来られた時にお会いすることがあります。仕事や学校に(もど)って,病院着ではない,その人らしい生活を送っている姿(すがた)を見たり,聞いたりすると,ほっとしたような気持ちになって,やりがいを感じます。

ゆっくり,わかりやすく話す

ゆっくり,わかりやすく話す

患者(かんじゃ)さんは声の高さや速さに敏感(びんかん)です。聞いて理解(りかい)しやすいよう,患者(かんじゃ)さんにはなるべくはっきり,ゆっくり話すようにしています。相手の反応(はんのう)を見て,「わかってくれたな」と思えてから,次の説明をするようにしています。言葉が不自由な患者(かんじゃ)さんもいらっしゃいますが,そういう方の場合でも,誠意(せいい)を持って,きちんとした言葉づかいで話すように心がけています。
同じ患者(かんじゃ)さんに何度も会っていると,親しくはなってくるのですが,「患者(かんじゃ)さんとセラピスト」という立場は(くず)さないようにしています。くだけすぎてしまわないようにする,ということですね。でも,10代の(わか)患者(かんじゃ)さんなどは,くだけた態度(たいど)(せっ)したほうが,心を開いてリハビリに取り組んでくれたりすることもあるので,ここは正解(せいかい)がなくて(むずか)しいところです。人によって,好むコミュニケーションのやり方が(ちが)いますから。でも,患者(かんじゃ)さんの考え方や要望を,できるだけ尊重(そんちょう)するように心がけています。

人の役に立つことがしたい!

人の役に立つことがしたい!

小学生のころから,家の手伝いをしたり,学校では,掃除(そうじ)や係の仕事にコツコツ取り組んで,人に喜ばれたり,ほめられたりすることが好きでした。その延長(えんちょう)で,人のために働く職業(しょくぎょう)につきたいと,何となく考えていました。
中学生の時,学校の図書館にあった本をたまたま手に取って,初めて作業(さぎょう)療法士(りょうほうし)のことを知りました。さまざまな職業(しょくぎょう)についての解説(かいせつ)が書かれた本のシリーズがずらっと(なら)んでいて,そのうちの一冊(いっさつ)でした。「へー,こんな仕事があるんだ」と思いましたね。その後,高校受験のときに阪神(はんしん)淡路(あわじ)震災(しんさい)があって,人のためにする仕事がしたいと強く思うようになりました。看護師(かんごし)もいいかなと思ったのですが,血を見るのがダメで,あきらめました。作業(さぎょう)療法士(りょうほうし)は「手工芸など細かい作業活動を使ってリハビリをする」と本に書いてあったので,「手芸なら好きだ!」と思って,それも作業(さぎょう)療法士(りょうほうし)を選んだ理由の一つかもしれません。なってみると,作業(さぎょう)療法(りょうほう)は必ずしも手を使う作業ばかりではないんですけどね。

おとなしかった子ども時代

おとなしかった子ども時代

小さいころは,おとなしくて,少しのことで泣いてしまう子どもでした。マイペースで,一人で絵を()いたり,空想にふけったり,手のかからない,少し変わった子どもだったと思います。でも,友達といろいろ話すことも好きでした。どちらかというと聞き役で,「相手がどう考えているか」を考えてしまうタイプですが,この性格(せいかく)は,患者(かんじゃ)さんの話を聞くのが重要な,今の仕事に役立っていると思います。
文化祭でも会計係をやるなど,目立たない裏方(うらかた)の仕事が好きで,黒子のように何かをやっているのが好きなんです。今の仕事でも,主役はあくまでも患者(かんじゃ)さんで,患者(かんじゃ)さんを(わき)から(ささ)える仕事ですから,つながっているなと思います。

自分のペースを見失わないように

自分のペースを見失わないように

考え方や,大事にしていることは,人によってさまざまです。自分と考え方の(ちが)う人もいます。でも,「あの人,こう思っているのかな」と人の気持ちに敏感(びんかん)になりすぎて,自分のペースを見失ってしまわないようにすることも大切だと思います。「人のため」だけでやっていると,自分がパンクしてしまうので。楽しいこと,うれしいことをみんなと共有するように,つらいことや,(こま)っていることがあったら,親しいお友達や家族,先生に伝えてみるといいと思います。

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取材・原稿作成:東京書籍株式会社